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絵画や古美術は温度や湿度にとても敏感。ルーブル美術館の『モナ・リザ』は現在、防弾ガラスケースに収められていますが、内部は常に湿度50%(相対湿度)、温度は21°Cに保たれているといいます。温度・湿度管理のない環境で長年放置されていたら、今ごろは………。

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水と地球

illustration: YUKI MURAMATSU
冬の東京は砂漠より乾燥している!? とはいえ、加湿しすぎもNGのワケ
2021/12/27

冬は寒くなると同時に空気の乾燥を感じますよね。これは、空気中に存在できる水分量が温度によって変わり、気温が下がると空気中に存在できる水分が少なくなるから。気温が高いとたくさんの水分が存在できますが、気温が下がるとその水分量がグッと減ってしまうのです。

地球温暖化の影響で世界的に気温が上昇していますが、実は湿度も変化しているのをご存じですか? たとえば、東京はこの100年で平均気温が3.2℃も上昇していますが、平均湿度は18%以上も下がっているのです。気温の上昇と湿度の低下は都市部で顕著に見られ、日本は全体的に気温が高くなり、乾燥が進んでいるということになります。

日本で湿度が最も低い場所は東京で、冬の間の平均湿度は46%。最低湿度が10%近くになることもあります。東京の冬は、平均湿度が約20%といわれる砂漠並みかそれ以上に乾燥することもあり、まさに「東京砂漠」というわけです。「東京砂漠」という歌のタイトルは、1964年の東京大渇水という深刻な東京の水不足を表した言葉からきているといわれていますが、現代の東京の冬はまさに砂漠化していると言ってもいいのかもしれません。

でも、温暖化で気温が上がるなら空気中の水分量を表す湿度も上がるのでは? と思いますよね。確かに絶対湿度(空気中の水分量)はそうなのですが、普段私たちが使っている湿度は相対湿度といって、空気中の水分の割合(%)を示すもの。気温が上がることで空気中に存在できる水分量が増加すると、同じ水分量でも水分の割合である相対湿度は下がるというわけです。そして湿度低下のもう一つの理由は、特に都市部は植物が少なく植物から空気中に蒸散される水分量が減少するためといわれています。

空気中の水分が少ないとどのような影響があるのか。空気に触れているものが乾いてきます。乾くのは人間だけではなく、犬や猫などの動物も同様ですし、植物も水を与えなければ乾いて空気中に蒸散する水分量が減少します。収穫したばかりの野菜は90%前後が水分ですが、それが5%失われるだけで鮮度や品質が低下するといわれています。野菜を乾燥した部屋に置いておくと干からびてしまうのはそのためです。紙や繊維なども同様で、空気の乾燥で、本の端が反り上がったりしてしまいます。

絵画や古美術にとっても、湿度はとても重要です。湿度不足はひび割れやひずみなどの劣化を起こす要因になり、逆に、湿度が高すぎると汚れや埃などがつきやすくなり、カビやシミの原因になることがわかっています。そのため、多くの美術館や博物館の展示室は、温度22~25℃、湿度は50~60%に保たれているのです。

私たち人間にとって最適な湿度は、ASHRAE(米国暖房冷凍空調学会)のデータによると40~60%。理由は、湿度が40%より下がるとウイルスやバクテリアが繁殖しやすくなり、呼吸感染やオゾンの生成が高まりますが、一方で湿度が60%を超えることでもウイルスやバクテリアが繁殖しやすくなり、さらにカビやダニも発生しやすくなるため。これは犬や猫などにとっても適した湿度で、美術品ともほぼ同じですよね。

つまり、最適な湿度は40~60%で、高すぎても低すぎてもNG。冬に加湿器を使う際は50%を目安にして、加湿しすぎには注意しましょう。洗濯物を室内干ししたり、お湯を沸かしたり、湯船にお湯をためて扉を開けていたりと、室内に水分を多く蒸発させるように工夫することでも加湿はできます。

でも、湿度が低いといいこともあります。冬に遠くの山や星や月が鮮明に見えるのは、温度が低いと対流活動が弱くなり空気中の水分やちりなどが少なくなるので空気が澄んでいるため。寒い夜こそ、防寒対策と保湿対策をしっかりして夜空を見上げてみませんか?

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