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食肉用の牛を1頭育てるのに1万2,000トンもの水が必要だといいます。食料の多くを輸入に頼っている日本では、食料と一緒に育てるために必要な水も輸入しているのです。

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水と地球

illustration: KENTO IIDA
バーチャルウォーターで身近に感じる世界の水不足
2024/08/01

現在、世界の水不足は深刻を極めているのをご存じですか?
2022年時点、世界総人口約80億人の中で、22億人が安全に管理された飲み水を利用できていません。これは世界の4人に1人が飲み水に困っていることを表します。そのうちの1億1,500万人は、湖や河川、用水路などの未処理の水を使用しているとユニセフ(UNICEF:国連児童基金)は伝えています。

世界の水の危機について、先日、オランダ・ユトレヒト大学の研究チームが発表した内容は衝撃的でした。研究チームは世界の水質と量の水モデルを使いシミュレーションを行い、現在と今後の課題を探ったところ、世界の人口の55%は、1年間に1カ月の頻度できれいな水が枯渇する地域に住んでいることがわかりました。つまり、世界の半分の人が1年間に1カ月は飲み水が確保できない場所に住んでいるというのです。(参考記事はこちら

さらに、世界の水は「量も質」も悪化が予想され、今世紀末までにこの割合は66%に増える可能性があると研究チームは危惧しています。水不足の深刻さは地域によって差がありますが、例えば米国やヨーロッパは1年間に数カ月間水不足に見舞われ、発展途上国の水不足はそれ以上に深刻な状況になるといいます。最悪のケースでは世界の人口の3分の2が、年間1カ月以上にわたってきれいな水の不足に見舞われると予測しています。

気候変動が大きな要因ですが水質汚染の影響も大きく、右肩上がりの人口増加も加わり、現在の水不足が将来さらに悪化するというのです。世界的な水不足は海に囲まれた日本ではあまり話題になりませんが、実は、他人事ではありません。

バーチャルウォーター*1という言葉をご存じでしょうか。食料を輸入している国が、もし自国でその食材を生産するとしたらどの程度の水が必要かを推定した数字です。例えば、1kg のトウモロコシを生産するには1,800Lの水が必要で、穀物を大量に消費しながら育つ牛の場合、牛肉1kg に対して約20,000 倍もの水が必要だといいます。食料を輸入することは、生産に必要な分だけ自国の水を使わずに済んでいるということになります。

食料の多くを輸入に頼っている日本のバーチャルウォーター量は、約800億㎥*2で、米国に次いでなんと世界第2位の水輸入国。この量は日本国内で年間に使用される量とほぼ同量なのだといいます。

次のうち水を一番使っているのは誰でしょう?
A)ホースから水を出し続けて1時間、車を洗っている人
B)300gの牛ステーキを食べた人
C)お風呂で湯船に浸かっている人
というクイズを出されたら、答えはもうおわかりですね。A)の1時間の洗車で使われる水の量は約240L、 C)のお風呂一杯は約200 Lですが、B)の300gの牛肉を作るために使用される水の量はなんと6000 L以上にもなります。
(バーチャルウォーター自動計算サイトはこちら)。

日本では8月1日は水の日です。夏は年間を通して水の使用量が最も多い時期。安全な水が飲めることに感謝しつつ、私たちは食料と同時に水を輸入しているという自覚を持って、水資源の有限性や水の貴重さに思いを巡らせながら、日々自分でできる節水を心がけたいものです。

*1 ロンドン大学名誉教授のアンソニー・アラン氏が提唱した概念
*2 virtual water(環境省)

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