水を知る
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水と体
広い海や湖を見ているとなぜか心が落ち着くと感じる人は、多いのではないでしょうか。実際に「水を眺めるだけで、血圧や心拍数が低下する」──そんな研究結果が発表されています。
カリフォルニア大学デービス校の心理学者の研究によると、海、川、湖など水を1分40秒間眺めるだけで、血圧や心拍数が低下し、リラックス効果が得られるそう。それは、プールでも噴水の水でもOK。水を眺めることで得られる効果だといいます。
この研究では、まず初めに、32人の人に、駐車場の木や道路標識やプールを見てもらい心拍数や血圧を計測。木や道路標識を見た後よりも、プールを見た後のほうが、平均心拍数が減少し、血圧(収縮期/拡張期比)が低下しました。次の研究では、73人が大学に付属するデイヴィス植物園沿いの場所を訪れ、水路や地面を見て同様に計測したところ、地面を見たときよりも水路や湖を見たときのほうが血圧や心拍数は平均して低かったという結果が出ました。水路よりも湖、というように、水域が広いほど効果は顕著だったといいます。
参加した人たちからの、「水面を見ているときによりリラックスした気分になった」という感想が計測結果を裏付けている半面、湖など広い水域を見ると心拍数が上がった人もいて、これは広い水場を見ることで逆に高揚感が表れた可能性もあるというのが研究者の見解。水を短時間眺めることによるリラックス効果は一時的なもので、持続的に眺めることでどのような効果が得られるかについてはさらなる研究が必要だとも伝えています。
都市設計などで、水路や川、運河、湖、海岸線などの水のある場所は「ブルー・スペース 」と呼ばれていて、公園や庭園などの緑地との相互作用で都市のヒートアイランド化を抑制することで、暑さに関係する病気のリスクを下げるのではないかと期待されています。
「ブルー・スペース」の近くに住むとメンタルヘルスの問題のリスクが減少し、精神的な健康状態が良くなったり、肥満の解消や呼吸器疾患の改善などにも作用することがいくつかの疫学研究*1でわかっています。最近の日本の研究でも東京の高層マンションでの実験で、海の景観のほうが都市の景観に比べてストレスを抱えやすい人のストレスが低下し、リラックス効果が高まったという結果が報告されています。
ストレスがたまっていたり、イライラするなあと思ったら、外に出て近くの水路や川、湖、海などを眺めに行ってみては? もし、近くにそんな「水が見える場所」がないという人も大丈夫。水に関するビデオを見たり聞いたりするだけでも少なからず効果は得られるとのことなので、仕事の合間に、海や湖のビデオを見るのも良さそうです。
*1 Green and blue areas as predictors of overweight and obesity in an 8-year follow-up study
A population-based retrospective study of the modifying effect of urban blue space on the impact of socioeconomic deprivation on mental health, 2009–2018
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