水を知る
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湯船に長く浸かっていると手の指先がシワシワにふやけてきます。そのふやけた指先で水の中のものをつかもうとするとどうなるか、そんな面白い研究報告があります。とはいえ、美肌のために長風呂はいいのか、悪いのか、それが大問題。さて、その答えは?

Dermatology
水と肌

illustration: TAROURYU
指先がシワシワにふやけるのは進化か、それとも老化か
2021/06/10

お風呂に入ったときに、指先の皮膚がふやけてシワシワになったことはありませんか? これは湯船に長く浸かっていたという証拠。肌の一番外側の角層が多量の水分を吸収して膨張している状態だといいます。

肌の一番外側の角層は薄いラップのように肌を外敵から守っていると「肌の潤いって? 実際に肌は水で満たされているの?」でお伝えしましたが、それは水の外でのお話。肌が水に浸かり続けると、角層に含まれるケラチンというたんぱく質が水を吸収してしまうと考えられています。お風呂から上がるといつの間にか元に戻ってしまうのは、角層に過剰に吸収された水が素早く空気中に蒸散してしまうからです。

でも、シワシワになるのは指先や足の裏だけですよね。その理由は、ほかの部位よりも角層が厚く水を吸収しやすいのではないかと長年考えられてきました。しかし、最近の研究では、シワシワになるのは神経系の反応ではないかといわれています。

「指先がシワシワになるのは水の中の物体をしっかりつかめるようにするため」という驚くべき研究成果が発表されたのは2013年のこと。イギリスのニューカッスル大学神経科学研究所の研究チームが、指をぬるま湯に浸してシワシワの指先になったグループとそうでないグループに、親指と人差し指を使って、濡れたガラス玉と魚釣り用の鉛を容器に移し替えるという実験を行ったところ、指がシワシワのグループの方がはるかに早く作業できたというのです。

シワシワの指は濡れたものをつかみやすく、これは進化の過程で人間が獲得した利点だと研究チームは考えているといいます。水の中の物体がつかみやすくなるのか、ちょっと試してみたいですね。

でも、長い時間、皮膚を水に浸けるのはお肌にとってはマイナスでしかなさそう。2020年米国ビンガムトン大学の研究チームが発表したのは、皮膚の角層を12時間水の中に浸し続けると、脂質や天然保湿因子が失われて角層の水分を保持する能力が低下するという研究結果。水分保持能力の低下は、肌の老化にも関わるといいます。ただし、水の温度が冷たいほどダメージが少なくなることもわかりました。お風呂で湯船に長時間浸かるのは肌にダメージを与え、肌老化にもつながる可能性があるというのです。

ちなみに、湯船に浸かって健康効果を得るには40℃以下のお湯に10分浸かれば十分とされています。体温が上がり血流も改善することで疲労も回復。美肌のためにも、くれぐれも高温、長風呂は避けましょう。

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